【バイクの話】 1次減速比 2次減速比 とはなにか

こんにちは、世界放浪2輪旅を目指す管理人です。

バイクの小話。
バイクも車も、エンジンの回転を最終的に後輪に伝えることで駆動するという意味では同じ乗り物ですが、特にMT2輪の話では「減速比」という言葉がよく登場します。
今回はエンジンの回転とその伝達経路を踏まえ、減速比とは何なのかを解説しようと思います。

エンジンの回転→→→後輪の回転

そもそもバイクはなぜ進むのか、、、、それは後輪が回転するから。

エンジンの強烈な回転を、いくつかのステップを経て後輪に伝えることで後輪が回りバイクが走ります。
一般的なエンジンの回転数といえば、だいたい3,000回転~8,000回転、高回転型のバイクとかだと10,000回転を超えることも・・・(これは1分あたりの回転数のこと)。
では後輪がそれと同じ勢いで回っているか?といえば当然 No です。
後輪がエンジンと同じ回転数で回ったらトンデモナイことになってしまう。なのでエンジンの回転数をどんどん減少させて、最終的に後輪に伝えているわけですね。その過程をみてみます。

エンジンからの力の伝達経路①~ピストンからクランクシャフトへ

エンジンの構造に関しては趣旨がズレるので割愛するとして、「エンジンの動力がまず回転運動に置き換えられる最初の場所」はクランクシャフト です。元々はガソリンと空気の混合気に点火することによって得られる火炎伝播のエネルギーをピストンが受け止め、コンロッドを介してピストンの往復運動(レシプロ運動ともいう)を回転運動に変えています。つまり、エンジン内でまず最初にまわるヤツがクランクシャフトクランクシャフトの回転数は、つまりエンジンの回転数と同値ということになります。

ピストンのレシプロ運動→クランクシャフトの回転運動

クランクシャフトの端っこには プライマリードライブギア という歯車があります。これがエンジン回転を伝達する最初のギアに相当するでしょう。ここからは各ギアと下の図を色で対応させます。

クランクシャフト→ドライブスプロケットへの流れ(クラッチは省略)

まずはピストンの往復運動によりクランクシャフトが回転→クランクシャフトの端にはプライマリードライブギアがついており、これはクランクシャフトと同じ回転数で回ります。

エンジンからの力の伝達経路②~1次減速

次にこのプライマリードライブギアプライマリードリブンギアと咬み合っています。
ここで注意したいのが、これら歯車の歯の数は

プライマリードライブギア < プライマリードリブンギア

ということです。
つまり、ここで初めてエンジンの回転数が減少されます。
ここで ? となった方は下の歯車の図を見てみてください。

左側の歯車は9のギア、右側の歯車は18のギア
左側のギアが1回転したら右側の歯車は何回転しますか?そう、1/2回転ですよね。
というわけで、歯車が大きくなることにより、回転数は落ちる これが原則です。

プライマリードライブギアプライマリードリブンギアにも同じ関係がなりたつため、プライマリードリブンギアの回る回転数はエンジンの回転数より少なくなるわけです。ではどれくらい少なくなるのでしょうか?
ここで 1次減速比 というものが登場します。

1次減速比=プライマリードリブンギア / プライマリードライブギア

で計算されます。例えば先ほどの

この図の左側の歯車がプライマリードライブギアだとすると、

1次減速比= 18/9 = 2  ということになります。

この場合はエンジンの回転数は ちょうど半分に減少する ということですね。
1次減速比は各エンジンごとに決まっています。

エンジンからの力の伝達経路③~ミッション

さて、プライマリードリブンギアからの回転の伝達はちと複雑です。ここにはクラッチという構造が関与するのですが、今回はあくまで「回転数」というものに話を集中するため完全に省きます。
プライマリードリブンギアは上の図でいうと シャフトA とそれに付随する各ギアと共に回転します。これらのギア達は向かい合うように シャフトB と、それに付随する各ギアと咬み合うようになっています。図ではギアが沢山ありますね。このギアを選択する作業が「変速:シフトチェンジ」に他なりません。このような変速を担当する部位全てをまとめてミッションといいます(オレンジ枠)
(※多くのバイクは常時勘合式ですが、図ではデフォルメしています。)
今はプライマリードリブンギアが(エンジンの回転数÷1次減速比)で回転していると想像してください。
ここでシャフトAのあるギアとシャフトBのあるギアが咬み合っていたとすると、ここでも先ほどの歯車の関係が成り立ちます。
基本的に咬み合うギアの歯数は

シャフトAのギア < シャフトBのギア

なので、ここでまた回転数が落ちるわけです。
ややこしいことに、ここでの回転数の落ちのことは~次減速とは呼ばないんですね。
ここではMT(マニュアルトランスミッション)を前提に話していますが、よくバイクやクルマのスペック表などで5速 とか 6T とか書かれていますよね?あれは、このミッションが何段階あるかということです。
つまり、6速とか6Tというのは、6段階に減速比を変ることができるということです。
ミッションに何段階の変速があって、各ギアでどれくらい減速されるか もバイクやクルマごとに決まっています。

エンジンからの力の伝達経路④~2次減速

さてエンジンの回転がシャフトBまで到達しました。
この段階では

【エンジンの回転数÷1次減速比÷ミッション減速比】

シャフトBがぶん回っているということです。
シャフトBの先端にはドライブスプロケットというギアが付いています。このドライブスプロケットが回転を後輪に伝える最終の担い手となるわけです。
このドライブスプロケットには何が咬み合うか、というと、
そう チェーン です。ようやく外から見える部分になりました。

上の図のようにドライブスプロケットはチェーンを介して後輪のドリブンスプロケットと連結します。これにてようやく後輪が回転し、バイクが走るのです。
さて、このドライブスプロケットドリブンスプロケットの間にも当然先の歯車の関係が成り立ちます。つまり、ここでも回転数が落ちるわけです。
この時の減速のことを2次減速比とよびます。

例えばドライブスプロケットの歯数が14 ドリブンスプロケットの歯数が36だったとすると

2次減速比=36/14=約2.57

となるわけです。
こうして、後輪が回転することで地面を蹴り、バイクは前進します。そしてこの時の後輪の回転数は

【エンジンの回転数÷1次減速比÷ミッション減速比÷2次減速比】

となるわけです。
例えば、

1次減速比:2.0
3速での減速比:2.0
2次減速比:2.5

のバイクが 7,000rpm (rpm は1分あたりのエンジンの回転数)で3速で走っていたとすると、この時の後輪の回転数は

7,000 ÷ 2.0 ÷ 2.0 ÷ 2.5 = 700

となります。つまり後輪は1分間に700回転の勢いで回る ということです。

まとめ

ちょっと難しい話のようですが、これを理解することで、シフトダウンの際のブリッピングという操作を理解したり、エンジンブレーキについても理解が深まります
是非、ご自身のバイクのスペック表で減速比を調べて、
「何速でエンジンが何回転のときは後輪が~回転まわってるってことかぁ」
とか計算してみるとおもしろいんじゃないでしょうか😊

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