こんにちは、世界放浪2輪旅を目指す管理人です。
以前
【自動車カルネを考える~自分の車両を海外へ持ち出すのにカルネは必要か?】
の記事ではカルネ申請書に記載されている内容を網羅した上で、面倒なカルネの発行を本当にすべきかどうか考えてみました。
前記事での結論
そちらの記事での結論を繰り返すと、
②出発から向こう1年間でカルネ対象国を通過する見込みがあるかどうか
が、要不要の決め手であり、大前提としてカルネが本当に必要かどうかは国境を越えるその時までわからないと記載しました。
カルネ自体があまり一般的な書類ではない特性上、たとえカルネ対象国であっても通関職員がカルネを正しく把握している事が少ないからです。
更に独断と偏見にまみれた具体的な結論として、
東南アジア・中東・東アフリカあるいはオーストラリアに向こう1年以内に入国するのであればあったほうがいい
というのが現状のものです。
また、陸路での越境は一般的にザルになりがち&その場で越境者と通関職員が顔をあわせることになるので 「なんだかんだ融通がきく」感があるのに対し、海上混載輸送などで車両を一時輸出する場合はギチギチの書類審査になります。
義理も人情も通用しないので、特にこれからの時代 カルネ対象国にバイクを輸送するというシチュエーションにおいては、必須書類となるかもしれません。
それを踏まえ管理人は
そもそも当初はウラジオストク出発予定だったため、ロシアはカルネ非対象国であることからカルネは不要と考えていました。
その後ウクライナ紛争の勃発によりロシアへの輸送は不可能となり、仕向先を北米に変更したのですが、やはり北米もカルネは不要なため、「発行が面倒な上に通関ペナルティの足かせになりかねない」カルネは出発後1年間で使う見込みもないし やはり不要だろう という結論に至っていました。
しかし、
コロナの余波による中国→北米貨物の過剰飽和状態に加え、ロシア領空空路便の航路変更が拍車をかけ、北米仕向も(予定を組んでの輸送は)困難な状況となった今、ほぼ唯一といっていい
「予定をブッキング可能で、なおかつ個人のバイク輸送が可能」
なのはインド洋シーレーンのハブ港があるUAEでした。
この辺の紆余曲折に関しては、また輸送に関する記事にて詳しく触れようと思いますが、
いずれにせよ 初動の仕向け先がUAEとなったことによりカルネの要不要は大きく変わります。
UAEがカルネ対象国なので 輸出・輸入通関にはカルネを用いるのが無難ですし、実際現地の代理店はカルネを必須とする要求をしてきています。
そして、最初の入国はバイクのみ航路となるため、先述の通り書類上の審査が何よりプライオリティを握ります。
更にUAEから入国したとすると、その後のルートはどちらに舵をとったとしてもカルネ対象国ばかりを通過することになります。
以上の事から、最終的な結果としまして
カルネを発行することになりました。
カルネの発行の準備
1.自動車カルネのご案内の取り寄せ
以前の記事でも触れた通り、カルネの申請は まず最寄りのカルネに対応したJAFの支部から申請書類を取り寄せることから始めます。
※写真は2021.12のものですが、現在最新版は2022.1.27のものになっています。
管理人は東京支部に電話をし、自宅に送ってもらいましたが、まずはメールにて相談し、窓口にて受け取ることもできるようです。
カルネの取り扱い窓口は
【JAF 国際業務の取り扱い窓口】の「自動車カルネに関わる手続きが可能な支部」を参照してください。
2.必要書類の記入 および準備
カルネの発行に必要な書類は、担保金のコンディションなどによって異なりますが、
担保金をカルネ保険 or 現金寄託にする(=保証書が不要)場合に則して記載します。
この場合 必要書類は
✔車検証のコピー
✔カルネ名義人の印鑑証明
✔保証人の印鑑証明
✔カルネ発行申請書
✔車両に関する記載
✔誓約書
✔スペアパーツリスト
✔パーソナルアイテムズリスト
✔旅行計画表
✔旅行ルート地図
の11点です。
この内注意が必要なのは
・カルネ発行申請書
・車両に関する記載
・スペアパーツリスト
・パーソナルアイテムズリスト
・旅行計画表
・旅行ルート地図
かと思います。
※印鑑証明は発行3ヵ月以内のものが有効です。
まず、こちらが実際に提出したカルネ発行申請書です。
以前触れたかもしれませんが、カルネを申請する上で現在は
「通過予定の国を申請段階から完全に決めて申請する必要」があります。以前はこの必要はなく、10枚綴じであればその10枚を適宜必要な国で使うことができたわけですが、現在はここに記載したカルネ使用国(〇がついている国)以外は発行されたカルネのリストから斜線で消されます。
では斜線で消された国でカルネを使用しようとしてもできないのか?
こればっかりはやってみないとわかりません。
※通過予定国は、後述の旅行計画表や旅行ルート地図とマッチするように注意します。同パンフレットを参考に、カルネ対象国を目安に〇をつけます。
※上の写真ではミスでバーレーンに〇がついてしまっています。
※旅行期間は1年以内に収まるように調整します。また、車両を輸送する関係で名義人と車両の出国タイミングがズレますが、その場合は車両の出国=出発日に合わせます。
※実際には船社の本船スケジュールなど随時更新するため、船積み予定日や実際の出港日などは異なります。ただ、書面上は
カルネ発行申請書の旅行期間の開始日
後述、旅行計画表の車両の出国日
後述、車両に関する記載の日本船積み予定日
は全て揃えてしまった方がよさそうです。管理人は全てばらばらで提出したため、窓口にて実印訂正をしました。
※担保はカルネ保険に✔がついていますが、最終的には現金寄託を選択しました。
※Jマークを付けなければならない合目的的な理由や条約条文は見当たらないので不要かと思いますが、記念に同時購入しました。
※国際ナンバープレートは別途小松自動車にて取得したほうが割安です。➡【国際ナンバープレートの発行】
次に、車両に関する記載です。
これに関しては基本的に車検証やメーカーカタログのスペックを参考に記載すればOKです。
※管理人の場合は20年式テネレなので新車価格がそのまま適応されますが、中古車の場合の「現在の価格」はJAFに算出してもらうことになるかと思います。
※新車購入時の3年車検がきれてない場合は、中古車でも新車価格が適応されます。
※管理人はタンデムステップを外しているので実際は乗車定員1人ですが、なんとなくカタログ通りにしてます。
※実際の積載重量は約75kgあるんですが、日本の法規上2輪の最大積載上限が60kgなので、60kgで記載しています。
※スペアパーツおよびパーソナルアイテムズの合計金額は、後述の提出リストとしっかり一致させます。
※車両輸送費の厳密な金額は、カルネ発行段階では分からないのが実際です。輸入税関でも場合によって追加費用が発生することなども十分あり得ますし、レートの変動により輸入税関側の費用は日々変わります。したがって、輸送代行業者と相談しつつ、ある程度の段階で出た見積を参考に記載するしかありません。
一般的な輸送見積のうち、輸送費に該当するのは海上運賃・ピークシーズンサーチャージ・重量長尺費用の合計などです。
※上の写真ではエンジン番号が車検証記載の原動機番号になっているのですが、実際にはこの後に番号がつづきます。
車検証ではなく、実際の車体を確認しながら記入のがよいでしょう。
つぎに、管理人が実際に提出した
・スペアパーツリスト
・パーソナルアイテムズリスト
・旅行計画表
のエクセルファイルを上に添付します。
※スペアパーツリスト、およびパーソナルアイテムズリストは輸送に用いる Invoice Packing List と完全に一致させる必要があります(少なくとも今の情勢における個人の車両輸出では という文脈で)。したがって、輸送代行業者と相談しながら輸出用のパッキングリストを完成させなければこれらを確定することができません。
※パッキングリストに対して輸入税関側のOKがでるのにかなりのタイムラグを要します。にも関わらず輸入税関側からカルネ原本の提出が求められるという究極のジレンマ状態なので 「まぁまずこれなら大丈夫だろう」というパッキングリストを完成させ、それでカルネの申請をしてしまい、
「いや、もうこれでカルネ申請してオリジナル発行されてるから変更無理だよ」的なノリで輸入側にプッシュするというのが実際です。
※カルネの申請書類としてはスペアパーツリストとパーソナルアイテムズリストを分けていますが、輸出申告に用いる Invoice はこれらをまとめます。
※現在 コロナ余波の影響もあってか個人の輸出物は税関にて非常に厳しい目にさらされます。以前がどうであったかはさておき、バイクと一緒にクレート内に梱包するパッキングリストの項目は、極力税関職員の目を引かないように気を遣う必要があります。
fire , stove , fuel , battery・・・・ 危険物を連想させるような文字列は極力避け、開封検査が入ったときのことを鑑みて実際パッキングリストには含めないのが賢明かもしれません。管理人は、多くの荷物を飛行機の預け荷物or機内持ち込みに回すことにしました。
※旅行行程表ははっきりいって超テキトーです。先述の通り、
・期間を1年以内にすること
・車両の出国日を 他記載の旅行期間開始日や日本船積み日と一致させること
だけ留意しました。
そもそも、イエメンなんかは長らく内戦で入国することはできませんが、この辺のチェックはあまりされませんでした。
※管理人の場合、「有効期間と申請時の当該国以外使えない縛り」は何とか融通がきくんじゃないかという根拠の無い自論にのっとって、25枚綴じのカルネが欲しかったため、適当にカルネ対象国を多く含むようなルートを設定しただけです。
※同じく、パーソナルアイテムズの金額もテキトーです。担保金に影響するため、極力安くなるよう調整しています。この辺は、自己責任です。
※いずれのシートもA4の紙に印刷して提出します。
つぎに、旅行ルート地図です。
上が実際に提出したルート地図です。
※先述の旅行計画表の順序と相違がないか、窓口でチェックがあります。出国・入国の順序と地図上の線が一致しているかよく確認しましょう。
※この通りに行く なんてつもりは毛頭ありませんが、あくまでカルネを発行する上での必要書類として用意する必要があります。
※南アフリカから帰国するつもりは、勿論ありません。
※イエメンには、入国しないほうがいいでしょう。
カルネの発行
あくまで参考として、管理人が実際に使用した記載やファイルを提示しましたが、
これからカルネの発行をしようという方の参考になればと思います。
ともあれ これらの準備が整ったら 最寄りのカルネ扱いがある支部へ赴きます。
窓口にて、必要書類のチェックをうけたら、あとはJAFからの連絡待ちです。
・通過国の関税率
・利用車両の価格
など鑑みて、JAFが担保金を算出してくれます。
管理人の場合はシリアの関税率60%が適応されました。
最終的に現金寄託を選択したため、連絡のあった金額を指定口座に振り込み、カルネの発行を待ちます。
現金寄託を選んだのは、帰国後にまとまったお金が返ってくると、なんとなくいいかな と思ったからです。
※現金寄託金およびクレーム処理預り金は帰国後に返金を受けることができますが、リミットはカルネ有効期限から10年間です。絶対忘れないようにしなきゃね。
その後、カルネ発行完了の連絡を受けて、再び窓口へカルネの受取に行きます。
発行されたカルネ原本。
同時に、
現金寄託分とクレーム処理預り金の預かり証も受取り、大切に保管しておきます。
関係機関へ協力を依頼する手紙と英文貸与証明
カルネの発行と同時に、
・関係機関へ協力を依頼する手紙
・英文貸与証明
も発行してもらえます。
後者は使用する見込みがないので割愛しますが、「関係機関へ協力を依頼する手紙」に関しては何かカルネ関連のトラブルがあった際に役立つかもしれないので持参するのがよさそうです。
Jマーク
同時に購入したJマーク。
思ってたよりデカ!!
国際ナンバーになんか全然貼れない大きさです。
これは・・・
一応持参して、貼り付けは保留ですね。
まとめ
自動車カルネの発行をするかどうか、
その判断基準と、発行する場合の実際についてをみてみました。
およそ一般的な書類ではない上に、ここまで煩雑な手続きを踏んだ挙句実際にはあまり使うこともなさそうなわけですが・・・
ここまで具体的に発行の実際を記載したものはないかと思いますので、
これからご自身の車両を国外に持ち出そうと目論んでいる奇特な方の参考になれば幸いです。
もし不明なことがあれば、個別に連絡いただければ答えられる範囲でお答えします。
アフターコロナの時代になり、以前とは事情が異なる部分も少なからずあるため、現状では最も最新の情報を持っているかと思います。
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