【エンジンがかからない・・・!】テネレ700 初の本格トラブルシューティング

こんにちは、世界放浪2輪旅を目指す管理人です。

つい先日、とある作業後にエンジンがかからなくなったテネレ700、
無事リカバリーしましたが、トラブルから回復までの流れ、原因の考察を記事にしておこうと思います。

エンジンがかからない・・・!

リンクのグリスアップに引き続き再びとある作業をするためにテネレを横にして作業していました。

作業を終え、車体をおこしエンジンを始動しようとすると、、、、
ん? かからない・・・!
何度やってもだめ。
キャブ車の場合はキャブレターのチャンバーからガソリンが漏れ出すため、被りでかからなくなるので、しばらく放置すればエンジンはかかりますが、
インジェクションでも???
と思いつつ しばらく放置。
しかし、かからない・・・・。
セルは回るものの、初爆すらなく、完全に点火していない様子。

この時の状況と症状をまとめると、
状況

・タンク内はほぼガソリン満タンであった
・車体は右側に倒していた
・エンジンは停止状態で作業開始し、倒すときも停止したままだった

・車体を倒していた時間は30~40分
・センタースタンドブラケットの取り外しのみで、電装系は一切触っていない

症状

・車体を起こした瞬間、キャニスターのドレンからガソリンが出てきた
・セルは回るが、エンジンが始動せず、初爆もない
・エンジン警告灯はついていない
・その他エンジン始動がないこと以外に異常所見なし
いろいろ考えましたが、まずは次のような思考回路でした。
「めっちゃ被っちゃったから、めっちゃ時間おかなきゃダメ?」
➡1日おいてもダメでした。
「角度センサーの異常?」
➡角度センサーはメインスイッチのOFFでリセットされるためこれもない。念のため一度角度センサーを外し、警告灯をわざとつけてからリセットしてみましたが、やはりだめ。
「センタースタンド付近をいじってたから、サイドスタンドセンサーに異常をきたした?」
➡ニュートラルセンサーが作動していれば、そもそもセルが回らないのでこれもなし。
ん~一体何が原因なのだろうか・・・・

原因はインマニラインへのガソリン流入だった

この後、いろいろな方から助言をいただきつつ、作業することで 結果「ガソリンが吸気ラインへ流入した」ことが原因だと分かりました。
今回はこの結果ありきで、内部で何が起きていたかを考察しようと思います。

まず大前提として昨今のバイクは環境負荷への考慮から「ガソリン蒸気を大気解放せず吸気側へと迂回させるラインがあります。
上の図でいうところの「Fuel-vapor separator」と「Breather pipe」がそれにあたります。
このラインを追っていくとキャニスターを経由してスロットルボディに繋がっているのが分かると思います。

テネレでの実際の現象は

新型テネレでも同様の構造となっており、上の図の1がタンクからキャニスターへのブローホースにあたります。

実際の写真でみると、この→側のホースがブローホースです。最初にガソリンが漏れ出すのはタンクキャップ付近ですが、車体を→側に倒すとタンク内でのガソリン面がブローホース入口より大幅に上位となるため、よりブローホースからの排出を助長するのかもしれません。
ブローホースに流入したガソリンはロールオーバーバルブを経由してキャニスターへ流入、
キャニスターを一杯にした後今度は4のパージホースへと流入します。
車体が右側に傾いているため、5のドレンホースからは逃げられないわけです。
※なぜロールオーバーバルブを押し切ったのかが未だに謎ですが、ロールオーバーバルブの構造上逆止弁を閉じるスプリングは内部構造の自重で沈むような脆弱なもので、あくまで短時間の転倒などでしか機能しないのでは?というのが今のところの結論です。

さて、先ほどの図の4ホース、すなわちキャニスター→スロットルボディへのパージホースですが、これは上の図の4にあたります。
上の図にあるとおり、これらは5のバルブを経由後2つのスロットルボディへと接続されていますね。

 

実際の写真でみると、指でさしてるのがスロットルボディへ流れ込むキャニスター由来のホースです。
ガソリンはここまで達し、インマニラインへ流入したということになります。

ではとりあえずキャニスターをはずし、

タンクからのホースは大気解放としておき、

スロットルボディへ繋がる方のホースはエアを吸わないように閉塞させてみます。
この状態でエンジンがかかるか、、、、トライしてみると、、、

やはりかかりません・・・。
ということは、キャニスター内のガソリン以外にも何か原因があるということ・・・?

プラグ交換するしかない!

本来はこの時点でエアクリーナーボックスを先に点検すべきでした。
が、
「上流側へいくわけがない」
「プラグが被っているに違いない」
という思い込みで、先にプラグへアプローチすることになりました。

今回は作業の詳細は全てはしょってしまいますが、
プラグ交換に関してはまた【テネレ700プラグ交換】で解説しようと思います・・・
いずれにせよ、プラグに関しては恐るべき整備性の悪さ。
ユーザーに試練を与える鬼仕様と言わざるを得ません。
プラグ2本抜くだけで上のような有様、

とにかく障害物が多く、いろいろ外さないとプラグにアクセスできません。

サービスマニュアル的にはラジエーターコアやブレーキホースにまで手が及びますが、それらには触らなくても何とか交換はできました。
かなり長いエクステンションが必要です。

格闘の末摘出したプラグは・・・・
まぁ、湿っているといえば湿っているけど、、、本当にこれが原因なのだろうか・・・

ですがとにかく新品に交換。
タンクを仮で元にもどし、フューエルラインを繋いでセルをまわすと、、、、

かからない。

まじかよ、ここまでやってだめってもはやECUの異常なのか??つまりレッカーか??
などと不安がよぎりまくります。
このままではGWにツーリングどころか家で体育座りして右手の人差し指で延々と地面に円を描くしかないぞ!

問題は思ったよりも身近にある

もはやセルの回しすぎでバッテリ―が弱っているか?と最後の頼みでバッテリーをフル充電。
その間、まぁ一応確認してみるか という気持ちでエアクリーナーボックスをあけると、、、

おう?

おう!

エレメントを外すと、

ワァーーーォ💛
もう見るからにこれが原因で間違いないという確信。
エアクリーナーボックス内がガソリンまみれではありませんか。
そうか、車体を倒しているから上流も下流もなく、ただ流体として行ける場所に逃げただけか・・・

スロットルボディ→エアクリーナーボックス内へ、このダクトを通って流入したということですね。

エアクリボックス内を綺麗に清拭し、エアブラシ用の貧弱なコンプレッサーで内部をよく乾燥させると、

エンジンがついに始動しました。
プラグ交換を先におこなってしまったため、果たしてプラグの交換が必要だったのか、今となっては分かりませんが、
最近のインジェクション車ではこんなことがあるのかと、大変勉強になりました。

その後

エンジンはかかりましたが、いろいろとやらねばならんことがあります。

とりあえず当面キャニスターはいらん!ということでタンク→キャニスターのホースは大気解放に。
入荷次第また装着予定です。
また、スロットルボディへのパージホース入口は、ちょうどよいネジで塞いだうえで、結束してエアを吸わないようにしておきます。

あとはエアクリーナーエレメントを新品に交換。これを機にUnifilterにしたかったけど、GWのツーリングまで猶予がないため、お店に在庫していた純正のものに。
在庫があってほんとうによかった・・・

あと大事なのが、オイル交換。
あれだけエアクリ内にガソリンが入っていたということは、当然シリンダー側にも流入したというのが道理で、
ピストンシールを通って下へ流入したガソリンがエンジンオイルに混入している可能性があるということです。
この辺も、ネット上で先輩ライダーの方が教えてくれました、感謝_(._.)_

出てきたオイルからそんなに異臭はしませんでしたが(ガソリンとオイルが混ざると強い異臭がするらしい)、念のためオイルフィルターも交換し、
オイル全交換後、少し抜いては新しいオイルを入れ、エンジンかけてまた少し抜いて~ を10回くらい繰り返しました。
さすがに大丈夫でしょう。

※なんとかGWに間に合わせるため、全て悶絶しごおわ夜間作業。

まとめ

無事、復活したテネレでツーリングに出ることができました。
助言いただいた諸先輩方、そしてディーラーのSCS白山様、大変ありがとうございました。
もしもリフト環境がなく、車体を寝かす際は、タンクから可及的にガソリンを抜くか、あるいはタンク→キャニスターのブローホースを抜いて作業することをおすすめいたします。