【The Islamic Republic of Iran episode1】試練 イランへの入国 最初の街 Ahwaz; アフワーズへ

こんにちは、グレートエスケープ中の管理人です。

イラク最南東の街バスラを去り、イランへの入国を試みますが・・・

ここまでのルート

今旅初の激体調崩し

イランへの入国を予定していた前夜、なんだか体調がおかしい。
満腹直後の膨満感と微妙な吐き気がいつまで経っても収まらないような感覚に襲われ、夜中に何度も目を覚ます。
その後不快感は増大し、ついに激しい下痢と嘔吐に見舞われてしまった。

最初はちょっとした食あたりかと考えていたものの、症状は一向に収まらず 脱水を避けるために飲む水が吸収されずにそのまま直腸に直行してしまう感じ。
20~30分おきにやってくる下痢の波のせいで全く眠れず、イラン行を見送る判断にした。

疲弊からか、消化器症状に加え感冒症状も出てきてとにかく怠い。
何かしらの食中毒と2次感染の風邪だと思うけど、とにかく自分の免疫力を信じてひたすら休むに徹した。

この時ほど日本のお粥やうどんを恋しく感じた事はない・・・
何か食べようと思っても、まわりにはケバブやらしかなかった。

試練、イラン入国を試みるも・・・

1日がっつり休んだことである程度症状が緩快してくれたので、翌日 国境へ向かう。

バスラから国境へはわずか20分足らずで行くことができる。

イラクの出国ゲート。

さて、ここからがまた波乱だった。
まずイラクの出国手続きが煩雑を極める上に誰も英語を喋ることができない。以前の記事でも触れたけど、全く電子化されていないので全て書類への手書きでプロセスが進んでいく。

パスポートへの出国スタンプは割りとスムーズにゲットできたけど、バイクに対する手続きがとにかく意味が分からない。
そんな感じで困り果てているところに、たまたまイランからの輸入物資待ちで居合わせたバスラの日系企業に勤めていたという英語を話せる男性が助けに来てくれた。
全ての書類手続きに同行してくれて、スタンプやら手書きの署名やらをあっちこっちもらって回る作業を全てやってくれた。
とても出国手続きが行われるとは思えないようなコンテナ小屋みたいなところも含まれていたので、アラビア語が話せないととても独力では書類を揃えるのは不可能だった。

そんな感じで4~5時間かけてようやく出国をし、次はイランへの入国だが、、、

やはりバイクの入国が厄介となる。
イランビザの発行をお願いしたエージェントのAhmad に電話をかけてもらい(この時点で管理人のSIMは既に失効していた)、電話越しの通訳で事の進行を伝えてもらうが、まずバイクの入国には現地で別途のエージェントの助けが必要との事で、その男がやってくるのを待つ。

バイクの通関を手伝ってくれるFaisal氏がやってきて、色々と確認作業を進めてくれているが、どうやら手続きを終える前にイラン側の通関が閉じてしまうという最悪の流れになってきた。

Ahmad から電話で、「通関が閉じてしまうので、今日イランにバイクと入国はできない。」
「バイクを国境に置いてRyuだけイランに入国し、後で取りに来るか、バイクと一緒に一度イラクへ戻るか選んでくれ」

まじか・・・・
体調もまだ5分5分ってな感じで、かなりしんどい上に 全ての思考を投げ出したくなったが、、、
イラクへの再入国だけはしたくねぇな という思いが強く前者を選ぶ。イラン側の直近の街まで管理人を運んでくれるタクシーのドライバーも到着したのだが、、、しばらくして

Ahmad 「イラン側の駐車場に停めるには通関後でないとどうしても許可されない。もしも国境にバイクを停めるなら緩衝地帯に放置するしかない。その場合バイクの安全は保障できない」
「もしもバイクの安全を最優先にするなら一度イラクに戻るしかない」

という流れになってしまう。
他の選択肢も色々と検討しAhmad に打診してみるが、どうにもバイクと一緒に一度バスラに戻るしかないということで最終的に諦めた。
更に不幸中の不幸だったのが、体調不良にて1日ずれ込んだせいで、この日は木曜だった。イランもアラブ諸国と同様金曜・土曜が休みとなるので、国境の通関が再開するのは3日後の日曜の朝なのだ。

5分5分くらいだった体調が再び7分くらい不良になってきた中、イラク側へ戻る。
イラクビザはシングルエントリーだったけど、そこはなんとか融通を聞かせてもらい追加費用なしで再入国させてもらえた。

イラクへの再入国が嫌だったのは、「一度イランへ入国したが通関ができずに戻ってきた」というやや複雑な事情を、絶対に彼らが共有していないので、各ポイントでいちいちその事を彼らに理解してもらわなければならないというタスクが再入国・3日後の再出国の際に発生するのが必須だったからだ。
出国スタンプにキャンセルが押されるまでにもかなり時間がかかって、その後バイクの通関書類を一度却下するのに更に時間がかかり、案の定バスラに戻れたのは日が暮れる頃だった。

ようやくイランへ入国

バスラに戻ってからの丸2日間は療養に徹した。戻ったその日は再びひどい下痢が再発したけれど、その後の休息でなんとか90%以上には体調を戻すことができた。今思えば、体調が優れないまままた慣れない新たな国に無理して入国するより、一度バスラに戻って体調を完全に回復できたのは良かったのかもしれない。

イラク—イラン間の越境ポイントにたなびく両国の国旗。

イラクの再出国もそれなりに大変だったけど、一度書類を全て揃えておいたおかげで、独力で出国ができた。
その後は、イラン側で待っていてくれたFaisalの助けを借りてイランの入国手続きを済ませ、ようやくイランに入国。

イランの入国スタンプはパスポートではなく、紙で発行されたイランビザに押された。イラクの出国スタンプはパスポートに加えて、ビザにも押される。
イランは今までで一番カルネの管理がしっかりしていたのも印象的だ。こちらが説明しなくても所定の欄にスタンプを押し、そして半券もしっかり切り取って保管しているようだった。車体番号の確認作業もあり、イラクから来ると非常にしっかりした印象を受ける。

諸々の手続きを終えて最終的に発行された許可証。

Border Information
Border Point : Shalamcheh(Iran)
DEPARTURE
★Carnet not stamped ???
No Covit
Departure fee : none
ENTRY
★Carnet stamped
No covid
VISA in advance €100+IQD 33000 → single 1 month
Customs fee : USD 100→customs + USD 30→agent
Registration Certification confirmed
Vehicle insurance : none

イランへの入国に関して

イランの近況

外務省の海外危険マップで見ると、イランのほぼ全土はレベル1となっている。
今までシリアやイラクを走ってきたので、レベル4に比べれば全然大丈夫じゃん といいたい所だけど、果たしてそうだろうか?
イスラエルでリクード党のネタニヤフ氏が首相に再任したこともあって、ここ最近イスラエルとイランとの緊張がかなり高まっている。
つい最近ではイスファハンにドローン攻撃があり(イラン側の防衛機構によって全て撃墜)、いよいよイラン本土への攻撃も実際に起きている。
それに対してイランではウラン濃縮が90%に近づいて、核合意は完全に度外視といった姿勢だ。
イラン対イスラエル、あるいはイラン対アラブ諸国といった緊張関係に加えて、昨年度に起きたマフサ・アミニさんの死亡に対する国民の反政府感情もかなり高まっており、革命の機運も夢物語ではない(日本では、どんなに反政府感情が高まっても 現実的に流血を伴う革命など起きることはないよね)。

引き続きアルジャジーラ通信やアラブニュースといった記事をチェックしつつ、現地エージェントの助言に注意深くなるべきという意味では、シリアやイラクよりも緊張感を持つべき状況といっていいかもしれない。

イランビザ

以前【バグダッドを行き交う喧騒】の記事で触れたとおり、イランビザはやや特殊で 日本のパスポートをもってしても紙媒体のビザを発行する必要がある(一般的な観光で空路入国の場合はわからん)。

 

FBの Overlanding the Middle East で知り合ったイランの現地エージェント、Ahmad 氏に依頼し、事前に “Grant Notice” を発行してもらっていた。この時の費用が確か€100.
これをバグダッドのホテルで印刷し、在バグダッドイラン大使館にてVISAに変換する。この時にも33,000 IQD=約3,000円の費用がかかった。

イランへの大型バイクでの入国に関して

一般的にはあまり知られていることではないけれど、国境越えのライダー達にとってイランは鬼門のひとつだった。
というのも、「イランには250cc以上のバイクで入国することはできない」というのが通説だったからだ。

これに関しては、旅の計画を練りだした当初から悩みの種であった。中央アジアとアラビア諸国、そしてトルコなど多くの国と国境を接するイランへ入国ができないとなると、これはルート的に大問題だからだ。

Horizons Unlimited や Overlanding the Middle East , Overlanding the Iran のFBグループなどでの投稿や質問を通して、結果この問題は最終的に以下のURLに行きつく。
➡【Riding Motorcycle above 250cc in Iran】

2019年の8月から、250cc以上のバイクもイランへ入国できるようになったというのが結論で、他のオーバーランダーの投稿を見てもテネレでイランに入国するのは絶対に可能だろう、というのが最終的な判断だった。

イランのネット事情に関して

イランに入国してしばらく走ると、SIM屋があったのでここでローカルSIMを購入。
通関エージェントの Faisal 氏が車で同行してくれて、スムーズに購入できた。

※イランは非常にネット制限が強い国だ。基本的にソーシャル系の閲覧は全て制限されている。例えローカルSIMを買っても、そのままではろくに使うことはできない。

そこで活躍するのが VPN だけど、管理人が今まで他国で使っていた Nord VPN はイランでは機能しない。Nord VPNは日本でもユーザーが多いので、イランで機能しないというTLをたまに見かける。

イランのVPN接続でおすすめなのが、この v2rayNG というアプリだ。

アプリをインストールした後、サブスクにて発行できるQRコードを読み込めば、ワンタッチでVPNを有効化できる。
イランのキャリア―は主に Irancel と Hamrahe Aval なので、購入するSIMとVPNの対応キャリアは揃えないと機能しない。管理人は幸運にもAhmad が両方共QRコードを発行してくれたため、2つとも表示されている。
購入したSIMはIrancel なので、モバイル通信時はIrancel のVPN を有効化する。Ahmad曰くホテルのWiFiはVPNと対応しないらしいけど、今のところの経験上 Hamrahe Aval のVPNを有効化するとホテルのWiFi でソーシャルの閲覧が可能なこともある。この辺の仕組みはよく分からない。

最初の街 Ahwaz; アフワーズへ

SIMの購入と、$で支払ったおつりをイラン・リアルで受け取った後、Faisal に礼を言っていよいよイラン・ライドのスタートだ。

イランの最南西部に位置するShalamcheh の国境から、首都テヘランに向かって北上していく。
しばらくは両脇に湿地の広がる道を軽快に進んでいく。

まず感想としては 「走りやすい! なんて走りやすいんだ!」

イラクを1か月強走っていたこともあって、
✔チェックポイントがない
✔舗装状態が良い
だけでものすごく快適に感じる。

アフワーズ南部には油田も多く、遠くにフレアスタックや黒煙が見える。

ついにイランまで来たかー。

とはいえ南西部の景色はこんな感じで、イランの美しさはまだまだこれからだ。

アフワーズの街に着いた。

アフワーズの街を横切る線路と、絡んできたにーちゃんたち。

アフワーズの街は Karun; カールーン川で街が東西に2分されている。カールーン川の向こうに沈む夕日。

イラン南部では、Ahmad やイラクバイカーズから、強く野営はしないように と言われている。なので、しばらくはおとなしくホテルを転々と移動しようと思う。これに関してもAhmad が事前にブッキングをしてくれるというからまじでありがたい。
ただ、事前にブッキングするということは、適当に走って暮れてきたらそこらへんでテントを張るという 超適当な計画性は許されないので、まぁトレードオフではある。いずれにせよ、イランを旅するのであれば信頼できる現地エージェントの存在は必須といってもいいかもしれない。

バイクは安全な地下の駐車場に停めることができた。

ってなわけで、まずは無事イランへの入国を果したレポートでした。

おまけ

イランのコンセントは主にC型が多い。

紙幣は イラン・リアル。
レートはレバノンと同様で刻々と変化している。公式のレートアプリなどでは、USD 1 = IRR 42,300 と表示されているが、実際には USD 1 = 約 IRR 550,000 なので、やはりブラックマーケットでの両替を心得ないといけない。
イランのリアルタイムレートに関しては➡BONBAST のサイトで随時確認できる。

イランでは国内・外発行問わず、VISA MASTER 全てが機能しない。VPN接続なしでのネットバンキングもNGだ。
とにかくユーロないしドルのキャッシュを持参する必要がある。リアルなお金事情としては ECARDというプリペイド式のカードを使って支払いを行うのがイランでは一般的。これに関してはまた後述しようと思う。

つづく

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