【Islamic Republic of Pakistan episode 4】Lahore; ラホール探訪で見た 第三世界像とムガルのコントラスト

こんにちは、グレートエスケープ中の管理人です。

パキスタンの首都イスラマバードで滞在しつつ、今後のルートの見直しなどをしていましたが、ついにラマダン(断食月)が明け、中東諸国は一斉にEid al Fitr という祝日に突入しました。これによって各役所といった公的機関は全て閉まってしまうので、Visa獲得のための奮闘もしようにもできません。
ってなわけで、この間イスラマバードでボケーッとしててもしゃーないので、東の大都市 Lahore;ラホール へ行ってみようと思い立ちました。

ここまでのルート

高速バスでラホールへ

とはいえ、帯状疱疹の発症によって常時の40%くらいのパワーしか出せる気がしない。荷物満載バカでかいテネレを乗り回す気には全くならないってなわけで公共交通機関をつかってみようかと思い立った。
どうやらイスラマバードからラホールへは高速バスが出ているらしい。

イスラマバードのやや南郊外、 Faizabad というエリアには、各社高速バスが大量に集まっている。

どの会社がいいのかサッパリだったけど、イスラマバードで知り合った Sayed 氏が「FAISAL MOVERSがいいよー」と教えてくれた。

Faizabad の夜はクラクションを中心に大変賑やかだった。

バスは意外と綺麗なのね。

早朝のラホール着

だいたい4時間半くらいだっただろうか、深夜発のバスだったので 早朝の4時くらいにラホールに着く。宿もとってなかったからどこに向かえばいいのかも分からなかったけど、とりあえず中心に近い方に行ってもらう。
タクシーは高かったからリキシャのおっちゃんと値段交渉してGo.

どこで下りたいかもよくわからないままリキシャに乗り込んだから、よくわからん場所で下ろされた。

よくわからんまま朝4時のラホールを彷徨う。

まぁ体調がよくないのにやることじゃねーな。さらに調子悪くなるわ。とか思いながら歩いていると、こんな時間にも関わらず煌々と賑わってる場所があるじゃないか。

まるで光に引き寄せられる蛾のごとく灯のある方へと吸い込まれていく。

どうやらバザールの一画に迷い込んだらしい。そしてやたらと靴屋が多い。どっちを向いても大概靴屋。

すでにクソ暑いのにこんなモッコモコのサンダル履くのか?そしてこのカオスなバザールに車で突っ込んでくるのは勇者かなんかか?

馬車傭員の馬がゴミだらけの道脇でエサを食べている。トゥクトゥクの奥には現役の馬車が控えていた。

すっかり明るくなってきて、城壁で囲まれた旧市街を抜けると、Badshahi Mosque のミナレットが見えて来た。

Badshahi Mosque

バードシャーヒーモスクはムガル帝国6代皇帝 Aurangzeb; アウラングゼブ の治世 1673年に建設された巨大なモスク。この日はモスク前にテントが張られていて、写真映え的にはちょっと微妙だった。

まだ早朝なので人はまばらだけど、これが午後になると人で溢れかえる。広大な中庭部分は、10万人が一度に礼拝できるほどに広い。

ドーム下の礼拝室内に入ってみる。

ムガル様式といわれるこのモスクの内装飾はまた独特で、シーア派モスクのような煌びやかさは全くないものの 細部まで植物を象った立体的な文様が張り巡らされている。

ドーム下の礼拝室は、内部の小さなアーチによって7つのセクションに分かれていた。

メインとおぼしきミフラーブの前で息子に何かを指南する男。

ラホールにきてから、やたらと頭上に鳥が多い。カラスかと思いきや鳶で、海辺でもないのになんでこんなに鳶がいるんだろう。

モスクの敷地全てを囲む壁の四隅には60mもの高さのミナレットが聳える。

左右対称かつ3つのドームが並んだこの「いかにもステレオタイプ」なモスクの概観もまた、ムガル様式の特徴なんだって。
早朝はまだ分厚い雲が空を覆っていて、その下に構える古のモスクと、それらの間を飛び回る鳶が醸す雰囲気は 映画でいえば何かが起こる凶兆を示唆するシーンのようだった。

モスクの東側にあたる出口にある門。

Lahore Fort

その門を出てそのまま東側を向くと、階段の下には綺麗に整備された Hazuri Bagh と呼ばれる広場のような場所にでる。その向こうに見えているのが、Lahore Fort; ラホール城の西側にあたる Alamgiri Gate.
街中もこれくらい綺麗に整備してほしいね!

ラホール城のすぐ脇には、19世紀頭にシク王国を創始した Ranjit Singh; ランジート・シング の廟が鎮座している。

ラホール城への入場はどっからすればいいのか謎で、入口っぽいところにいったら8時に来い といわれ、8時に言ったら9時に来い といわれたので、もーいやと思って宿探しをした。幸い中心近くで1,500円くらいの宿が見つかったので 投宿してしばらく寝る。帯状疱疹による神経疼痛で左わき腹が痛い。

ラホール城はもう入んなくていっか、と思ったけど、夕方出かけたら先の Almagiri Gate から入場できるようになってたので、せっかくだから入ってみる。この辺まったくRPGゲームかよ と思う。夕方になるとこの門が開く みたいな。

Diwan-e-aam. ラホール城内部は、何かデカい城がボンっっとあるみたいなイメージをしていたけどそうじゃなくて、割りとこじんまりした建造物が敷地内に点在しているって感じだった。

修復中の 建物もいくつか。

Jahangir’s Quadrangle. 奥に見える Jahangir’s Sleeping Chamber や Sehdari Pavilion など。
手前に座っている青い服の子が超絶美人だったので写真を撮っていいか聞こうと思ったけど、近くにお父さんらしき人がいたのでやめた。ひよった。帯状疱疹のせいにしとく。

その点Guys は向こうから写真撮ってくれといってくるから楽だ。

Diwan-e-Khas. ラホール城の歴史は不明な点が多いらしいけど、概ね今見られるこれらの建造物は、ムガル時代 16世紀以降のアクバルやジャハンギール、シャージャハーンなどによってつくられたものが多い。

城内の鳶。

Shah Burj Gate から退場。

それにしても、ラホール城内から眺めた バードシャーヒー・モスク側の眺めは最高に美しかった。夕日をバックにライトアップされる3連のドームとミナレットは、「なんとなく」イメージする「アラビアン・ナイト」を具現化したような景色だった。まぁパキスタンはアラビアでも中東でもないんだけど。

ラホール城の北側にある広大な公園にて、白く輝く Minar-e-Pakistan.

公園内には遊園地もあって、相変わらずの夜型ピーポーなパキスタン人で賑わっていた。

Heera Mandi 界隈のいま

Heera Mandi; ヒ―ラ・マンディという名前を聞いたことがあるだろうか?厳格なイスラム国家であることもあって性産業やポルノの類が厳しく制限されるこの国において、ヒ―ラ・マンディは「歴史的売春街」として政府にも黙認されるパキスタンの赤線地帯だ。

ラホール城やバードシャーヒー・モスクのすぐ南側に広がる旧市街の一画に、ヒ―ラ・マンディがある。

Pepsi × I ❤ Lahore.

旧市街北側の建物。

実際には、時代の変遷に伴う規制の強化と、ネットとSNSの普及によって娼婦たちの客引き場がネットワーク上に移行したことで、現場で客引きを行う女性はほぼ皆無というのが現状。

何か食べたいと言ったら近くの食堂を紹介してくれた二人。

朝の食堂名物、順番なんてかんけーねー行列。普通に並んだ方が早いと思うんだよ。

揚げパンとカレー(?)風味のスープ。おいしくはないけど、とりあえず腹ごしらえにはなる。

 

ラホール城すぐ脇のコリドーは修繕されて綺麗に整備された建物が多く、特に人の出入りが多い。

特に目を惹いたビルの正面観。

夜の雰囲気。

さて、ヒ―ラ・マンディ界隈の夜の表情もみてみよう。

大き目の路地は人通りも多いけど、一本裏路地に入るとかなり怪しい雰囲気が立ち込めてる。

カシャン、カシャン、と音がするので振り向くと、ラクダが闊歩してくるじゃーないか。

具合がよろしくないのに、屋台メシにチャレンジするのはおすすめできないが、、、積極的に悪く言うつもりはないんだけど、まじで今まで食ったハンバーグ(?)の中で一番まずかった。ってかハンバーグかどうかがまず謎。

わずかに灯のある夜の路地、っていいね。

おそらく15年前くらいだったら、華やかに着飾った女性たちが並んでいたであろうバルコニーも、今はこの様相。巨釜でなんか茹でてるおっさんがいるのみ。

 

ヒ―ラ・マンディ夜散歩で一番のミステリーだったのが、なぜか大して人通りもない路地にスパイダーマンがいたことだろうか。そしてそのスパイダーマンの背後にいたおっさんが急に絡みだしてノリノリだったこと。この派手シャツのおっさん、表情、声色、しぐさ どれをとっても間違いなくゲイだった。この国でそんなあからさまにゲイオーラ出して大丈夫なんか?

Music Group の看板が見える。

かつては華麗に踊りを踊っていた女性たちや、その後ろのバックバンドの名残なんだろうか。

時代と共に街の表情は変わるものだけど、かつての華やかな歓楽街を もう見ることはできないと思うと少し寂しい気もした。

Masjid Wazir Khan

また別のとある日、ラホール中心部から少し東に向かって歩いて行ってみる。

街の雰囲気は、区画ごとに大分違う。

暑い中歩いていると、通りがかりのリキシャのにいちゃんがタダでいいから乗ってきな と乗せてくれた。

見えてきたのは Masjid Wazir Khan.
シャー・ジャハーンの治世のムガル帝国にて、1641年 パンジャーブの有力者であった医師の Wazir Khan によってつくられたという。

モスク前で売られていた、シュークリームの皮だけみたいなの。

モスク前の広場(Chowk という)には店が多くでていて、ラクダも出張っていた。

Masjid Wazir Khan の正面イワーン。正面上部にはShahadaがアラビア語で、その両脇にはペルシャ語で、イスラムのアフターライフを表わす詩がカリグラフィーで描かれている。イワーンの両脇にはバルコニーが突き出していて、非常に独特なつくりをしているけど、これはティムール様式に分類されるらしい。

イワーンの半ドームを下から。

花瓶に生けられた草花など、非常に精緻なデザインが描き込まれているイワーンの両サイド。

そのイワーンを抜けると中庭に。ここからは裸足にならないといけないんだけど、地面が超熱い。

メインの礼拝室と内装の壁面フラスコ画。
豊かな植物の紋様は、アフターライフのパラダイス;楽園を象徴しているらしい。

耐アルカリの顔料をつかった Buon-Fresco という技法によって複雑かつ広範にわたって壁画が仕上げられている。

Wazir Khan モスクの内装様式はムガル帝国の様式と、地元であるパンジャーブの当時の伝統的な様式がミックスされていて、ムガル時代のものとしては珍しいといわれている。外装はこれに対して、イランで見た来たようなペルシャ様式のKashi-kariと呼ばれるタイルワークに似ている。

ちょうどアザーンが響きわたって、ゾフルのサラートがはじまった。

8角柱のミナレットにも、それぞれの面に木のアラベスクが描かれている。

イワーン内面は修復中。

Masjid Wazir Khan を去ってまた歩き出す。

かわいい塗装のHONDA.

ラホール旧市街を囲む城壁に点在する門のうちのひとつ “Delhi Gate”

サウジアラビア ジェッダにあったRawashin に似た感じのバルコニー。この類はサウジに限らずイラクとかでも似たようなのを見たなぁ。

日本のママチャリのノリで、70ccのバイクが使われている。

Lahore Metro; ラホール・メトロ体験

さて、更に東の方まで足を伸ばして Shalamar Garden; シャーラマール庭園に行ってみる。さすがに歩ける距離じゃないのでリキシャをつかまえる。

今見ると、まじで精気の無い顔してんな。よくもまぁこんなシケた面で歩き回ってたもんだ。

サスペンションってもんがないから、路面の振動がダイレクトに伝わってきて脇腹が痛い・・・
そして運転手のおっさん 管理人が庭園で降りると言ったのを忘れて通り過ぎちまった・・・・
その代わり たったの50ルピー(20円ちょい)で降ろしてくれた。

だけど幸い、この通りにはパキスタン唯一のメトロが通っている。
リキシャから下りたとこからちょっと歩くと Mahmood Booti 駅があったので、せっかくなので乗ってみる。ドバイやドーハ、テヘランなど けっこう各地の鉄道も体験できてるなぁ と思った。

もともとは世界銀行の出資で、最終的に中国企業が製作を請け負ったのかな、いずれにせよ2020年開通ということもあって、街とうってかわって超キレイ。なぜか券売機はなく、直接窓口に並ぶので長蛇の列になっている。チケットではなく、コイン形のトークンが渡された。

ホームの雰囲気とオレンジラインの電車。運転手はいなくて、自動運転なんだとか。

車内もキレイ。やっぱり、キレイだと誰もゴミを捨てないんよね。出る時は改札でトークンを回収される。

Shalamar Garden

通り過ぎた分ちょいと戻って無事たどり着いた Shalamar Garden.

ここも、ムガル皇帝 Shah Jahan; シャー・ジャハーンによって造営が命じられ、1642年に完成した庭園。

広いプールや噴水、そして水路の先に離宮がある構造はイランで見て来たペルシャ庭園と同じだけど、このシャーラーマール庭園の最たる特徴は そのような庭園がさらに上段・中断・下段 と3階構造を成していることだ。

あまりにも広大、かつ階層構造をしているので、全貌をちゃんと把握して歩き回るのは難しい。たぶん中段にあった大理石の広大なプールと噴水群が、この庭園の一番の見どころなんだと思う。

庭園内で声をかけてきてくれたレディース。

ガールズ。

そしてガイズ。

パキスタンに来ると、女性達がみんな両手に微細なペイントをしているのが分かる。今回話をするきっかけを得て、写真を撮らせてもらうことができた。

ムガル帝国のペルシャ庭園、壮大な何かがあるわけじゃないけど、散歩がてら行ってみてもいいかもしれない。

異世界への扉 Lahore Gate の先に広がるバザール

またとある日、ふらふらと彷徨う様に迷い込んだバザール。ここはAnarkali Bazar と呼ばれる一帯。ウサギのような長い耳のヒツジ。

露天トラウザー屋のにいちゃんたち。

ここから先の通りには、数百年の歴史をもつ建物が雑居ビルに混じって点在している。

おぉなんかいい雰囲気の看板だ。

垂れ幕が賑やかな通りを北に向かって歩いていく。

帽子売りのおじいちゃん。

 

なんだかよくわからない”揚げ物”が多い。

ラホールでしたたかに生きる野良っち。

これはココナッツか?

一度大通りを越えると、その先に Lahore Gate が。

門をくぐり、さらに深淵へ・・・・

ラクダとバイクが行きかう路地には、所せましと何だかよくわからない店が軒を連ね、路地の両脇には汚水の流れる水路と夥しいハエ。

どうお世辞にも綺麗な景色とはいえないし、人によってはここにいるだけで具合悪くなりそうだけど、

だけどどうしてだろうか、この通りにはすごく惹きつけられた。建物の雰囲気なのか、その間を行き交う粗雑に配された電線のせいなのか、まるで異世界の闇市にでも紛れ込んだ気分だ。

今まで見てきたどのバザールよりも土着的で、観光化されてない、ローカルの生生しい市場。

愛想のいい肉屋。猫が虎視眈々とおこぼれを狙う。

今日もまた、絶え間ない喧騒の中数多の商品が売り買いされてるんだろう。

あまりにも印象的だったせいか、別の日にまた来てしまった。

午前中はまた違う表情で、夕方のような妖艶な賑やかさはない。

ヤギの餌やりだろうか。

そんなヤギの切り落とされた頭と虚ろな瞳、そしてそこにたかる大量のハエ。「わーっ!おいしそう!」ってこれ買ってくんかな? う~ん・・・・

後ろに沢山のイチゴを積んだ男が、何かの瓜を「買ってく?」

綺麗な顔立ちで靴を磨く少年。

シロップ売りのおっさん約2名。

ウルトラ手作業で溝の微調整をする鍵屋のおっちゃん。

Lahore Museum

ラホール探訪のしめくくりに、ラホール・ミュージアムにやってきた。19世紀後半 イギリス領インド帝国時代に築かれた建物自体も、一見の価値あり。

おそらくパキスタンが誇る最高の美術館のひとつ。展示は美しく管理されていて、ガンダーラ美術、ムガルの遺物、シク教の歴史などなど 区画ごとに性格の違った展示を楽しめる。見ごたえはかなりありよりのありで、真剣に見るなら2~3時間は所要といったところだろうか。

一応、展示物も。同美術館にて最も有名な「断食する仏陀」像。2世紀 KPK州Sikri 出土。

ってなわけで、短いながら濃密なラホール滞在を終えて、再び高速バスでイスラマバードへ戻るのであった。

おまけ

ヤレたホンダに跨って、煙草片手にアンニュイなおまわりさん。

つづく

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