【Republic of Lebanon episode 4】中東3大遺跡 ド迫力のバールベック と” 雪山の苦難”

こんにちは、グレートエスケープ中の管理人です。

今回はレバノン山脈を越え、東部のベッカー高原に位置するバールベックに向かいます。

Baalbek へ向かう

レバノン山脈の北部は冠雪や凍結が心配だったけど、ベイルートからバールベックへの道は主要道路が南側を通るからか、全く問題なかった。

山の斜面に家々が並ぶレバノン中東部の田舎風景。

途中、何気なく休憩で路肩に停めると、

そこは精肉店で、

店主が中に招いてチャイを淹れてくれた。地中海から離れ山間部にはいると気温は10℃前後、ちょうど手がかじかんでたところだったので 助かった。

店内の様子。

肉を切る台と道具たち。

ありがとう、精肉店のおっちゃんたち。

たくさんの教会や、キラキラのメタリックグリーンに輝くモスクを過ぎ、

バールベックの遺跡までやってきた。

客待ちの白ラクダ。

Baalbek の遺跡

バイクを安心できそうなところに停めて、遺跡内へ。
入場料は、確か 300,000LBP = 約900円だったような(当時ブラックマーケット・レート)。

バールベックで最も巨大(だった)ユピテル神殿への入口にあたる構造物;propylaea と、その復元図。

そこらじゅうに柱頭なんかが落ちているから、アンカンサスの彫られた跡まで手で触ることができる。

エントランス部分を抜けると、

Hexagonal Courtyard とよばれる六角形の形をした中庭的空間にでる。

Courtyard の更に先につづくのが、The Architecture of Great Court という長方形をした巨大な空間だ。

四方は壁に囲まれていて、小さな列柱や祭壇が散在している。

Great Court の奥にある階段を上ると、

そこには今まで見たどの柱よりも巨大な6本の列柱があった。
これがTemple of Jupiter; ユピテル神殿の一部で、1世紀頃よりローマ帝国(シリア属州?)によってつくられたという。8世紀の地震によって瓦解する以前は、この巨大な柱が全部で54本並んで、神殿の屋根を支えていたというから、そのスケールはもし現存していればギリシアの神殿などをはるかに凌駕する迫力だったでしょう。

直径2.2m, 高さは20mにも達する巨大な柱。クレーンもなにも無い古代に、一体どうやってこんな超巨大で超重量の物体を規則正しく配列したんだろうか。

正面からは見えない屋根の底部分?だろうか、そこにまで彫刻が施されている。あれは何の花びらだろうか。

バールベックには「バールベックの巨石」というなんともファンタジー感溢れるオーパーツが存在する。
ユピテル神殿の基壇部分に使われている石の大きさが見えるだろうか、下段の方にある直方体の石は、大きいもので800t の重さが見積もられるものが混じっているらしい。
“トリリトン”と呼ばれる特に大きい3つの石は、写真の更に奥側にあるようだけど、現代の工業用クレーンでも持ち上げる事すらできない超重量の巨石を、どうやって運んだのか、さらにどうやって持ち上げて積み上げたのか、未だに謎のままだという。

神殿自体はローマ支配時のものだけど、基壇部分はそれ以前、つまりフェニキア人あるいは北西セム系民族によってBaal神やHadad神を祭る神殿としてつくられたものが流用されている。なので、この巨石を運んだのは古代セム系の彼らなわけだが、一説によれば魔術をつかったとか・・・

ユピテル神殿から南側を見ると、そこにはバールベックの遺跡群の中で最もアイコニックかつ保存状態よい Temple of Buccus; バッカス神殿が冗談抜きのド迫力で鎮座している。
さすがにペトラやパルミラと並び中東3大遺跡に数えられるだけあって、一度見たら忘れない凄まじい印象を残す遺跡だ。

バッカス神殿を背景に。

列柱~屋根にかけての細かい装飾。

屋根の底面にまで細微な彫刻が施されている。木の板みたいなのは補強かな。

バッカス神殿脇部分の回廊。

ここの柱も巨大だけど。

バッカス神殿は内部の祭壇までかなり綺麗に保存されている。
祭壇への入口と、復元図。

入口の門。

門の脇に彫られた彫刻。2000年も前のものとは思えないほどに細かくて精緻に植物の文様を表している。

門を下から眺めると、鍵を両の鈎爪に把持した鷲が。残念ながら損傷してしまっている頭部は、どんな眼をしてたんだろうか。

内部は長方形の広い空間で、一番奥に階段と、それにつづく祭壇と思しき構造物があった。

気になったダビデの星と酷似する紋章と、バッカス神殿の南東側にひっそりと展示されていたモザイク画。

ユピテル神殿が古代セムのアダド神と、ローマ由来のユピテル神の同化を促したとするなら、バッカス神はセム系のアタルガティス神との同化を象徴しているのかもしれない。ユピテルーアダドが天候や嵐をつかさどり、バッカスーアタルガティスは酒や豊穣をつかさどる。

ちなみに、ユピテル・バッカスと並んでもう1つの祭神を祭るTemple of Venus; ヴェヌス神殿は敷地の外にある。

バールベック、想像以上の壮大さだった。時間があるならサイト内で一日中ぼけーっとしててもいいね👍

カディーシャ渓谷へ 雪山の苦難

バールベックの街をゆっくり観光、といきたいところだったけど、この日はこのままカディーシャ渓谷へと向かおうと考えていたので、早々に出発する。

レバノンの観光地を走る3輪車。トゥクトゥクっていっていいのかな。

まずはのどかな田舎道を呑気に走っていく。

ただ、バールベックからカディーシャ渓谷付近へは、レバノン山脈のかなり北側を通ることになる。

ベッカー高原に広がる農作地帯。

西に進むとレバノン山脈の傾斜を上り、だんだんと気温が低くなってくるものの、まぁ大丈夫だろうと進んでいく。

山羊の群れが突然山肌を駆け下りたりしてくるので、スピード出し過ぎ注意。

舗装状態はよく、美しいレバノンの田舎景色を楽しみながら走る。

標高は1,500mくらいだろうか、気温は10℃をきりつつある。

道の向こうに冠雪した山稜が。なんて綺麗なんでしょうとか思いつつ、まさか雪とかでてこないよな?と不安になりだす。

緩やかな円弧に雪を頂きつつ、なだらかにその斜面が農作地に移行する姿は、日本の田舎道を思い出す。

そして更に進むと、不安が的中し 道に雪が出始める。
とはいえなんとか車の轍を通って進めないことはない。

何度か転倒しながらも、超低速で超ビビりながら進んでいくも・・・

もはや轍すら無くなり完全な凍結路になる。
後輪が空転し、にっちもさっちもいかない状況に。気温は1℃くらいだっただろうか。

ふぅ、まぁこんな時はとりあえず一旦きれいな景色でも眺めて楽観的なムードになるのが大事。

一回バイクを倒して向きを変えて起こすしかないか、、、めんど・・・あぁーめんど・・・

と、頭の中で詮のない独り言をぶつぶつ考えていると、上から車がきた!
まさかのオランダ人観光客の青年たちが、上から引き返してきたところに遭遇したのだ。どうやらこの先は完全に雪で道が塞がっていて、彼らの4駆でさえ突破不可能で、2時間かけてスタックした雪をかきわけ戻ってきたらしい。

そんな場所に普通タイヤの700ccバイクで突っ込んでるヤツは完全なアホだった。

屈強な男どもの力を借りて、なんとか方向転換し、また何度か転倒しながら生界に復帰した。
いや~久々に「これやべぇな」という状況になったけど、誰も通らないような雪道に、たまたま同じく無知の観光客がきていたのは幸運だった。

雪のない舗装路サイコーとか思いながら、仕方なく来た道を戻って、途中からベイルートへ進んでいく。

カディーシャ渓谷には、乱獲によって絶滅に近いレバノン杉(実際にはマツ)の自生地帯があるというので、行ってみたかったんだけど、時期が違ったようだ。いつかまた、夏に訪れられたらいいね。

夕日にきらめく美しいレバノンの田園。

ベイルートに戻る頃にはすっかり暗くなっていた。

おまけ

ベイルート宿での自炊。

パスタを茹でて、

スーパーで切り売りしてたサラミにトマトソースをからめ、

茹で上がったパスタをぶっこんで完成。

つづく

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