こんにちは、グレートエスケープ中の管理人です。
サマルカンドの記事がつづきますが、今回はこの街に古来から伝わる製紙の様子と、同じく古代からシルクロードの中継市として栄え今なおつづく大規模なバザールをみていきます。
Siyob Bazar
以前の記事で紹介した Bibi Khanym モスク正面イワーンのすぐそばに、シオブバザールの入口があった。既に中央アジアは文字通り「大陸の夏」。クソがつくほど暑くなってきてる。
まずは地元の農家で採れた野菜や果物なんかの食料品が並ぶ。スイカの扱いがなんか雑なんよな。過剰供給なんじゃねーかと思わざるを得ない量のスイカがそこら中に積まれてる。
この米は産地を聞いたら パキスタン産、カザフスタン産、ウズベキスタン産など。ジャポニカ米はまぁあるわけない。
色とりどりの新鮮なフルーツ。サマルカンドは見どころも沢山あるし、数日滞在するなら観光を開始する前にまずはバザールでフルーツを仕入れて毎朝の朝食にしてもいいかもしれない。
簡易テントが連なる。
こっちも色鮮やかなスパイスが並ぶ。
オシュのバザールでも見た、お惣菜的なやつの量り売りコーナー。
一般的に、スーパーとかで買うよりも、安く買うことができる。
バザールの半分くらいはこんな感じの半室内みたいなスペースに広がる。
大量の卵は、この気温の中外に出しといて大丈夫なんか・・・?
シオブバザールでは、他では手に入らないような珍しいスパイスも取引されるらしいけど、日本人からしてみれば全てが珍しい。
ここは陶器がずらりと並ぶ。おそらくほとんどはフェルガナのRishton; リシタン で作られたもので、リシタン陶器とよばれる。
日常づかいに便利そうなサイズの皿から大皿まで、ウズベキスタン陶器独特の色合いと紋様の食器が美しい・・・。
特に魅力的だったかわいらしいポットたちをクローズアップで紹介したい。
もう全部買って帰りたいよね。
ここはナッツ類やレーズンのコーナー。アーモンドやウォールナッツ、ピーナッツなどを好きな量だけ買うことができる。
ここでもナバートを発見した。ウィグル~中央アジアでも一般的なようだ。
試食したら爆ウマで思わず買ってしまったピーナッツ。
これは大昔のシオブ・バザールの様子を描いたもの。ビビ・ハニム・モスクのドームが見えるから15世紀以降、たぶんティムール帝国の治世なんだと思う。様子は違えど、今も昔も盛況ぶりは変わらないんだね。
Samarqand Paper
世界最古の「紙」といえば、誰もが古代エジプトのパピルスを想像すると思うけど、パピルスは植物の繊維を縦横に折り重ねたもので、いわゆる紙漉きという行程を経てつくられる「製紙」とは違う。この点でいえば最古の紙は紀元前2世紀頃の中国で発明された。
製紙技法という点では遅れていた中央/西南アジア~西洋にこの技術が伝わるきっかけとなったのが、751年に起きた東西大帝国同士の衝突、タラス河畔の戦いだ。
西軍だったイスラームの大帝国アッバース朝が、東軍 唐 を破った事で、唐軍の捕虜によって製紙技法が西側に伝わったといわれている。その時、まず最初に製紙の拠点となったのが ここサマルカンドだったのだ。
サマルカンドで作られる紙は殊更に「サマルカンド・ペーパー」といい、伝来した8世紀以降高品質な紙として知れ渡り、コーランの編纂などにもつかわれたらしい。そんなサマルカンド・ペーパー、機械生産の紙が世に出て以来衰退の一途を辿ったけど、近年になってからその技術の復興が推進され、サマルカンドで今なお製紙の様子を見ることができる。それがここ “Koni Ghil Meros Paper Center”.
敷地内には小川が流れ、そこに幾多の水車が置かれた美しい景観が広がる。
さて、製紙の行程を順を追ってみてみる。まずは原料となるマルベリー(西洋桑)を裁断し、扱いやすい長さにする。
この枝から、表皮の軟らかい部分のみをナイフで削ぎ取る。
削ぎ取られた皮を窯で煮込んで、繊維を脆くする。
煮込まれた繊維は、臼と杵でほとんど粉末状になるまですり潰される。
この杵、木製のシャフトは外に繋がっていて、その端はこのように大きなシャフトから出たフラップによって動かされている。
そいでもってこの大きなメインシャフトは水車につながっていて、つまり動力源は川の水流なのだ。
粉末状になった繊維はこの容器の中の水に溶かされて、和紙の製作と同じような木枠の道具で”漉く”。
枠から取り出した紙の原型は、コットンの布で挟んだ状態で重しを乗せて乾かす。
重しを除去して取り出された紙。これを更に乾燥させた後、
石の板で磨き上げて表面をツルツルに仕上げて、
完成。職人さん曰く、機械生産の紙は数十年でダメになるけど、この紙は2,000年もつ とのこと。
工房の傍らには、サマルカンド・ペーパーを用いてつくられたお土産屋もあった。管理人は、バイクでも邪魔にならない小さな紙切れをひとつだけ購入した。
施設内には、製紙工房の以外にも色々なみどころがあるようなので適当に歩き回ってみる。というか、なんだか日本の田舎にある小川沿いの城下町みたいな雰囲気で、歩き回るだけでも楽しい。
たぶん現役の窯。
別の水車を発見。
この水車のシャフトは、なにやら隣の建物の中につながってる。
ちょうど出て来たおっちゃんに建物の中にいれてもらうと、シャフトの先端はベベルギアになっていて、ここで回転軸が縦に変わる。そして横方向に回る臼の中には巨大なこん棒が副えられていて、臼の中に入れられたシードをすり潰していたのだ。
ウズベキスタンの人はほとんどが英語を喋ることができないので、これらが何の粉末なのか 結局よくわからなかった。いずれにせよ、こうしてオイルを抽出しているようだ。
また別の水車を発見。この水車のシャフトは反対側で増速比のシャフトにドライブベルトで連結されていて、
そのシャフトはなにやら小さなボックス型の器械に繋がっている。その反対側は更にドライブベルトで繋がったシャフトに切り替えられ、
そのシャフトの反対側から水平方向に切り替わったドライブベルトが、
最終的にこの石臼を回すという構造。これも水力ミルってことだ。
途中から、ここは施設内なのか、そのまま外に出ちゃってのか分からなくなる。
多彩な色のアヒルたちも、気持ちよさそうに泳いでたな。
家屋の壁に無造作にかけられた絨毯。柄が、イランの絨毯とは全然違う。パキスタン北部やウィグルのバザールで見たものとはやや似るけど、やっぱり違う。
川の向こうのおじいちゃんと孫.
用途不明の水車も多数。
ってなわけで、サマルカンドに今なお伝わる、なんとなく和紙に親近感の湧く製紙工程の見学でした。
おまけ
旧ソ連 AvtoVAZ製のセダンがとにかくかわいい。サマルカンドでみかけた VAZたちを羅列する。
う~ん、緑のVAZがなかなか現れないな。
つづく