【Islamic Republic of Pakistan episode 3】帯状疱疹発症とルート再考 ~おれはカルネを甘くみていた

こんにちは、グレートエスケープ中の管理人です。

イランとの国境タフタンから、およそ1,500kmに渡り警察車両同行のもと、6泊7日目にしてようやく首都イスラマバードに到達しました。

身体の異変の原因が分かる

バロチスタン州のクエッタを過ぎたあたりから、何だか左わき腹あたりに違和感があるのをずっと感じていたけれど、久しぶりに強い紫外線にあたって、Tシャツごしに日焼けでもしたんだろう、くらいに考えていた。

ずっと風呂にもはいっていなかったから、身体の状態を確認することもなかったのだ。

ただ、イスラマバードに到着した時点で、ほとんど経験したことがないような疲労感を感じていて、これは単なる消耗なのだろうか という不安があったけれど、死んだように寝た翌朝、久々に風呂に入り、自分の上半身を目視してようやく異変に気付くことができた。

脇腹から背中にかけて、帯状に著しい発疹がでていたのだ。しかもその発疹はきれいに身体の左半分のみに限っている。
もうこれは国家試験の問題にできるくらい明らかな帯状疱疹の兆候だった。

今までも色々と体力の限界まで身体を酷使するようなことはしてきたけど、帯状疱疹を発症したのは初めてだ。
過酷な環境にも慣れたつもりだったし、そういう意味での体力には自分で自分に信頼をおいていたけど、どうやらどこかでその限界を超えていたらしい。
これがパキスタンに入国してからの〇ソ護衛走行+ラマダンによる食事不足+40℃+睡眠不足によるものなのか、それとも出発してから10か月の諸々の蓄積の結果なのか 分からないけれど、さすがに無視して放置できる症状ではないようだ。

宿のすぐ近くにあった小さな診療所に行くと、近くにある大型の病院に行くように言われた。やってきた PIMS Hospital.
かなり敷地がでかく、どこに行けばいいのか分からないので、とりあえず EMERGENCY のスタッフにどこに行けばいいか聞くと、そのまま救急外来で診てもらうことになった。

あまりにも症状が典型的だったので、担当医師もそっこうで状況を理解してくれて、抗ウィルス薬・解熱鎮痛薬・神経疼痛治療剤・軟膏などの処方箋を出してくれた。診療費はかからなかった。病院近くの薬局が集中したエリアに行き、当該薬剤を入手。薬代も1,000円程度で済んだ。しばらくはおとなしくこれらを服用して身体の回復を待つ必要がありそうだ。

古橋氏と再会

イスラマバード滞在中、嬉しい出来事としては 同じく日本人ライダーの古橋さんと再会できたことだ。
同氏とは3~4年前にWTNJ のお話会でお会いしたことがあり、既に70カ国以上をセローで走破している海外ツーリングの大先輩でもある。19年以降サウジアラビアがビザを解放してから、最初にアラビア半島を走った邦人でもある。古橋さんは22年9月にセローを東南アジアに輸送し、東南アジア諸国→インドを経由してパキスタン入りしていた。

古橋さんとは2日ほどイスラマバードで情報交換をし、その後同氏はイランへ向かうべく、南西方向へと走っていった。

ようやくSIMを入手

イスラマバードに来て、ようやくSIMを入手することもできた。
他国では、そこらへんのモバイルショップでSIMを購入できたのに対し、パキスタンではパスポートやVisa の提出と共に登録が必要なようで、外国人がSIMを購入できる店は限られているようだ。おそらく今までの街でしきりに警察官が「この街でSIMは買えない」と言っていたのは、これが原因かもしれない。

たまたま宿の近くにあったのが ufone の店だったので ufone のSIMを購入したけれど、実は Jazz という銘柄のSIMの方が良いことを後で知った。

イギリス人ライダー Guyとの出会い

イスラマバードにいる間にあったもう一つの素敵な出会いは、イギリス、スコットランドからのライダー Guy との出会いだ。

彼は管理人と同じく新型のTenere700 乗りで、インスタグラムの投稿からお互いが同じ車両で、しかも同じイスラマバードにいることを知った。DMでやりとりをして、直接会うことになったのだ。

Guy氏のテネレ。2021年式。

Huzar のハイマウント・マフラーに、Camel ADV のサブタンクなど、よく見ると拘りのカスタムが施されている。

Guyは、イギリスから欧州を経てトルコ経由でアラビア半島に入り、オマーンからパキスタンのカラチへバイクを輸送したという。なぜイランを走らなかったのか聞くと、英国国籍の場合イラン国内を車両で走行することができないんだという。

Guy とも何度か会い、今後のルートの相談なんかをした。彼はイスラマバードにあるVisatronix にてインドビザの発行待ちで、無事ビザが手に入り次第ラホールからインドへ向かう。彼は当然英語のネイティブ・スピーカーだから、なかなか聞き取れないことが多かった。全然まだまだ、英語を上達させないといけないなぁと、痛感する。

Guy と 管理人のテネレ2台を停めて一緒に夕飯を食べていたところ、サウジから来てるMohammad が声をかけて来た。彼はサウジから愛車のGSをイスラマバードに空輸したという。なんとも、このパキスタンの地で稀有な3人が集まったもんだ。類は友を~ とはこういう事なんだろうか。

後日、Mohammad から送られてきた画像。無事GSを受け取り、ツーリングをスタートできたようだ👍

今後のルート再考

さて、イスラマバードで帯状疱疹を発症し、身体の事を鑑みて足止めを余儀なくされた状態で、今後のルートのことを冷静に考えてみる。

当初はこのまま東へ向かい、インドへ入国する予定だったのだけど、今までの行程で当初の予想より大幅に時間が経過していた(出発前は半年程度でインドに到達するだろうと思っていた)。

そこで問題になるのが「カルネの有効期限」である。
古橋さんやGuyとも話をしていく中で、どうやら管理人の「まぁカルネに関してはなんとかなるっしょ」という考えは至極甘かったことがわかる。
というより、今までカルネの問題をずっと先送りにしてきたツケがいよいよ回ってきたという感じだ。

既にカルネの失効まで1か月を切っているのだが、もしこのままインドに入国したら確実にインド国内でカルネが失効することになる。
上の地図はカルネ条約の大元であるADACが提供しているカルネ要求国の中東周辺MAPで、パキスタンはどっちにいってもカルネ対象国に囲まれているのが分かる。

海外ツーリングとして一般的なユーラシア~ヨーロッパ・南米などの経路ではほとんど問題にならないカルネ問題も、中東~インド亜大陸界隈ではかなりシビアに考えなければならない問題だったというのを、この期に及んで認識したというアホっぷりである。
自分の車両をこういった国に持ち込むのであれば、カルネの有効期限を鑑みた上で、所要時間とルートをある程度厳密に勘案する必要があったのだけど、管理人はその辺完全に行き当たりばったりだったのだ。

この時点での柵としては

①正規の手順にのっとってカルネの有効期限を延長する
②カルネを新規発行する

③カルネ失効前になんとかカルネ非対象国に逃げる
④失効したカルネでゴリ押ししてみる
⑤カルネを改ざんする

などが考え得る案だ。

カルネの有効期限延長

まず①が一番リーガルな案といえる。カルネの延長手続きと新規発行は全くの別もので、延長であればカルネ対象国であるパキスタンに留まったままでも可能なのだ。この手続きを踏むには管理人のカルネ発行元であるJAFの協力が不可欠だ。
ということで、現状についてJAFに問い合わせを行ったところ、以下のような返信が返ってきた。

✔そもそもパキスタンはカルネ申告時のリストに入っていない。現在の現金寄託はシリアを最高関税率として計算しているが、パキスタンの関税率はそれを上回り約50万円不足するので、まずはそれを追加納入すること。
✔延長手続きをする上で、JAFと保証人の承認が必要。パキスタンの保証団体 =Automobile Association of Pakistan にレターを出し、現地許可が出たら現地税関で延長証明をうけること。
✔延長した場合、その延長期間内にかならず車両を日本へ持ち帰ること。それができない場合寄託金の返金ができないこと。

まぁお役所同然なJAFからの返信としては想像通りだし、マニュアルに沿った返答しかできないのは理解できるけど、はっきり言ってまったく現実的ではない。車両を使っての移動である上は、ルートの途中変更は十分あり得ることだと発行時にコンセンサスを得ていたつもりだったけど、ルートが変更になる度に新規通過国の関税率に従って追加寄託って、そんなバカな話あるか?
しかもJAFを通して延長手続きをしたら、その期間内に車両を日本へ持ち帰らないと寄託金が没収される?なんだそのルール。
そもそも寄託金というのは現地税関からペナルティの申告があった際にそれを建て替えるために収めているものなのに、そういった現地からの要求とは関係なく寄託金が没収されるというロジックが全く解せない。

こういった日本独自のルールというのは、カルネ発行前から不審に思っていたので、この際大元のADACに救済を求めようと連絡をすると、「日本の発行元の指示に従ってください」というにべもない返事が返ってきた。

まぁカルネの有効期限をしっかりと計算していなかった自分が悪いんだけど、JAFの頼りなさとお役所仕事には正直閉口した。
なにより延長期間内に車両を持ち帰るというのは不可能なので、この案はなし。

カルネを刷新する/カルネ非対象国への退避

カルネの新規発行もひとつの案だ。だけど、これに関しては「カルネ対象国外に一度出る」のが必須条件となる。
先の地図を見ると、パキスタンの周辺でカルネ非対象国なのは
・アフガニスタン
・中国
・トルコ
だ。

まずアフガニスタンに関しては、少し調べたところパキスタンとの陸路国境は一般観光人に対して閉鎖されていてパキスタンから直接移動するのは難しい。しかももしアフガニスタンに移動できたとしても、日本との直行便がないことから、カルネの返送などで大きな問題があるし、荷物がロストする可能性も非常に高い。

中国に関しては言及するまでもなく車両を伴った入国先としては鬼門で、一般的に自分の車両と一緒に入国するのは非常に難しい国とされてきた。が、つい最近ロックダウンが解除され、国境が開いたのと、それに伴い中国の現地エージェントが中国国内の走行を可能にするプランを提示しているので、不可能ではない。

トルコに戻るのが一番簡単ではあるものの、イランのビザを再取得の上、来た道を全て元に戻らなければならない。これは気持ち的には一番避けたい。

もしもトルコや中国へ退避さえできれば、その後の国々はほとんどがカルネ非対象国となるので、この場合はカルネの新規発行はせず、そのままカルネなしで旅を続けることができる。次にカルネが必要となる時(おそらく西アフリカ)までは放置でいいかもしれない。

失効したカルネでゴリ押しする

今までのカルネ使用国は、UAE、バーレーン、ヨルダン、イラク、イラン、パキスタン だったけど、カルネ提出時の状況を振り返ると、しっかりとカルネを確認していた国は少ない。

パキスタンとイランではかなりしっかりしていたけれど、他の国ではカルネの扱い自体現地職員が把握していないことがほとんどで、どこにスタンプを押すか、どの半券を切り取るか などをこっちから指南するほどだ。
なので、「現地スタッフがカルネをよく分かってない」という状況に賭けて 失効したカルネのままシレっと提出するというのもまぁひとつの案ではある。

だけど、残念ながらインド含め、インド亜大陸のカルネ対象国は概して通関が非常に厳しく、特にインドに関しては古橋さん曰く「入念に」カルネのチェックをしていたという。
なので、失効したままのカルネを提出した場合非常に高い確率でそれを指摘され、結果現地税関からペナルティを受ける可能性が高い。

パキスタン出国時のスタンプに関しても然りである。

カルネを改ざんする

これは完全にアウトな案なので、ここに詳細を記すのは避けようと思うけど、成功さえすれば最もパワフルな方法ではある。
ただ、やはりカルネを「入念」にチェックするであろうインドには適用しない方がよさそうだ。

中国にトライ

さて、以上のような事をいろいろと考えてみた結果、中国への入国にトライするのが最善なのではないかという結論になった。

まず上述の通りJAFを通しての手続きはあり得ないので、リーガルにインドへ入国するのは断念するほかない。インドの通関・税関が非常に厳しいことを考えると、現カルネを使用して何らかの方法でインドへ進むのも避けた方がいい。

もし何らかの方法でインドへ進むことができたとしても、ミャンマーとの国境が閉じている以上は陸路の行き止まりで、ムンバイからどこかへ海上輸送するか、あるいはネパールのカトマンズから空輸する必要がある。
その場合は輸送費でかなりの金額がかかることになるので、それを考慮すれば中国のエージェントにある程度の費用を支払って陸路で中央アジアへ抜けられるなら、そちらの方がいいだろうというの考えだ。
それに中央アジア以降は先述の通りカルネとは無縁になるので、失効したカルネを保持したまま旅をつづけられる。唯一、有効期限内にパキスタンを出国できるかどうかが問題だ。
なにより、来た道を数千キロ戻ってトルコへ行くのは絶対に嫌だった。

となれば、まずは中国ビザの取得が専らの課題となる。

イスラマバードにある中国のビザセンターにやってきた。まずは中国エージェントの助けなしでいけるかトライしてみようってなわけだが、、、

オンラインでの申請書類を全て作成したうえで、訪れるも
「車両での入国にはパキスタン・中国 両国から特別な許可が必要」
とのことでReject された。まぁ当たり前だ。

その後も、イスラマバードにある Ministry of Interior や Department of Transportation などを転々として情報を収集してみるも、どうやら自力で書類を揃えるのは不可能だと悟る。なにより体調が優れないので、これ以上悪あがきをつづけるには気力がもたなかった。
不幸にも、ラマダンが明けることでEID Holiday に突入し、全ての関係機関が閉まってしまうため、意思決定を急ぐ必要もあった。

結局、FBの Overlanding Asia などの投稿で知りあった中国の “Drive China” の エージェント Bing 氏に連絡を取ることとなる。

彼曰く
「正直に車両をつかってパキスタンから陸路越境すると言ったらビザを取るのは至難、というかほとんど無理」
とのこと。

さて、この後 中国ビザを取得するための壮絶な(?)戦いが始まるわけなのだが、、、、
それはまた後述しようと思う。

おまけ

イスラマバードで出会ったポリス。白バイは SUZUKI.

いままでずっと衣類洗濯の洗剤は液体タイプをペットボトルに詰め替えてつかってたけど、古橋さんおおすすめで、個別包装の粉洗剤に替えてみた。うん、たしかにこっちの方が断然管理しやすくていい。

つづく

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