【Republic of Turkey episode 10】人類最古の文明遺跡 Göbekli Tepe; ギョベクリ・テぺ から Nemurt; ネムルト山へ~マケドニアとペルシャの融和をみる

どうもこんつくは、グレートエスケープ中の管理人です。

シャンルウルファの街の郊外にて野営明け、人類最古の遺跡のひとつとして有名なGöbekli Tepe; ギョベクリ・テぺの遺跡を訪れた後、北へと向かい Mount Nemurt; ネムルト山を目指します。

ここまでのルート

Göbekli Tepe

朝。東の空が朝焼けに染まり出す時間はまだ快適だけど、

日が昇りきるとすぐに気温は耐えがたいくらい暑くなってくる。

早々に撤収して、すぐ近くにある人類最古の遺跡として名高い Göbekli Tepe; ギョベクリ・テぺ へと向かう。

テネレは駐車場にとめて、ミニバスでサイト内へと入って行く。

おおまかにA~F まで、6つの構成要素が一般公開されているけど、

遺跡のメインとなるのは A~D 4つの構造群で、昔の写真にはなかった屋根が、今は遺跡保護のために設置されている。
夏場はめっちゃありがたい🙏

A~D 構成群の全景。正直、遺跡としてはいたって地味で 荘厳な神殿や豪奢な祭壇みたいなものを期待してはいけない。
ただ、今だ発掘が全体の10パーセントにも満たないと言われる段階で、最古層は紀元前10,000年に達すると考えられていて、PPNA(; 先土器新石器A期)に相当する。

遺跡を最も特徴づけているのは、T字に組まれた重さ10~20tにも及ぶ巨石で、それが円形に並べられ、基岩に彫られた穴に嵌め込まれている。現在確認されてるだけでも、この巨石のモニュメントは約200, それによって囲まれたサークルは20存在するという。

遺跡が地味なのにも関わらず 世界的に重要視されるのは、この遺跡が旧石器から新石器へのちょうど過渡期につくられたものであるにも関わらず、このような巨大な宗教様構造物を擁している点で、これは、農耕がまだ定着するよりも以前の狩猟採集がメインの段階で 人々がこれだけ大がかりな宗教施設を建造して儀式的な活動を行っていたことの証拠であるという点なのだ。

遺跡の景観はめっちゃ地味なので、各石柱に彫られたレリーフのアップを紹介したい。

 

 

 

ライオン、イノシシ、ロバ、キツネ、ハゲワシ、クモ、サソリ、ヘビ と様々な動物のレリーフが発見できて楽しい。
遺跡がつくられた紀元前9,000年前後は まだ地球の自転軸が現在の23.4°よりも24°に近く、太陽エネルギーやモンスーンの影響で現在のトルコ南部含む北緯15~30°の地域は森林や草原に覆われていたと考えられている。中東の遺跡なんかでも、今では見られないような動物のレリーフがあったりするのは同じ理由かもしれない。

併設された簡単なミュージアム。
出土品の本物とかは、ここではなくてシャンルウルファ博物館に展示されている。

当時の想像復元図と模型。

スクリーンと迫力のサウンドで、当時の儀式の様子をイメージした演出も印象的だった。

Mount Nemurt へ

ギョベクリテペの遺跡を見終わった後は北上してネムルトを目指す。

日本で問題の過積載、中東じゃ当たり前。でもそれこそ郷に入ってはなんとやらよね。

定期的に出現する 不自然なほどに青い小川。

広大な農地を抜けて、

はぐれた子ヤギを群れに戻してやりつつ、進んでいく。

途中、突然の雷雨からのヒョウ。分厚いライジャケの上からでも小石を投げられているように痛いので 堪らず止ってヒョウが落ち着くのを待つ。
さっきまで40℃越えてたのが、一気に25℃くらいまで気温が下がる。わずか10分程度でここまで気温が乱高下するのは初めての経験かもしれない。

茫漠な砂漠から、だんだんと道は山がちになっていって、幸い進行方向には晴れ間が見える。

後ろを振り返ると 暗雲がさらに厚みを増していた。

ユーフラテス川にあるアタテュルク貯水池と、そこに架かる巨大な斜張橋 Nissibi Bridge を渡る。

この貯水池の下流にあるアタテュルクダムこそ、イラクを走っている時にユーフラテスの干ばつの原因だとイラクのライダー達が主張していたダムのうちのひとつだ。トルコの主張は全く逆だけど、はて 真偽のほどは Who knows.

天気も安定してくれて、順当にネムルトに近づいていく。

やっぱりひたすら砂漠とかステップがつづくより、こういう山岳風景の方が走ってて楽しい。当たり前か。

途中、ドイツ人サイクリストとすれ違って なんか写真を撮ってもらった。

ネムルトまで目前のところで、なにやら地面を這う生き物を発見し停まって引き返すと、ウルトラ強烈な見た目のバッタが悠長に道を横断しているではないか!なんじゃこいつは!!大きさはゆうに20cmを越える上に強烈な色合い。色んな意味で規格外なバッタだった。
後日調べたら、たぶん Saga Ephippigera という種類のようで、和名は見つからない。

思いもしなかったバッタとの出会いでテンションがあがりつつ、標高もアゲていく。

Mount Nemurt

そしてついにやってきた、ネムルト山。
遺構のふもとには、けっこうちゃんとしたビジターセンターがあった。

ビジターセンターから、さらに急な坂道を上って ネムルトの墳墓(墓かどうかは定かではない)のちょうど根本までやってきた。
遠くで雨が降っているのが見える。

遺跡がある山の頂上までは、さらになかなか急な遊歩道を上って行く。

途中から道は墳墓を形成する小石と地続きになって、

右手にはトルコ東部アドゥヤマン県の丘陵山岳地帯がぱぁーーーっと開ける。

そうして頂上に辿りつくと、墳墓東側の遺跡が姿を現す。
7~8層に積み上げられた石段の上に 9体の座像が並んでいる。
この墳墓は 紀元前62年、コンマゲネ王国の王 Antiochus Ⅰ; アンティオコス1世 がつくったと考えられている。
コンマゲネという名前はあまり聞いたことがないし、世界史の授業には一切でてこないけど、紀元前8世紀 ごろアッシリアの属州的なものとしてあらわれるらしい。その後、アッシリアを滅ぼしたメディア、メディアを滅ぼしたアケメネス朝、アケメネス朝を滅ぼしたアレキサンドロス帝国、そしてディアドコイ以降はセレウコス朝と同盟関係を保っていたけど、紀元前162年に独立して、72年ローマ帝国によって再び属州化されるまで王国して独立を保っていた。

座像の全てから首は切り落とされていて、今ではそれが座像の前に綺麗に配置されている。イスラム勢力による 偶像破壊の一環として、あるいは地震や落雷など さまざまな原因が考えられている。
左から鷲、アンティオコス1世、豊穣の女神 コンマゲネ。

ゼウス、アポロン、ヘラクレス。

そして鷲、ライオン。

興味深いのは、アンティオコス1世自身が自らのアイデンティティをセレウコス朝(ギリシア、マケドニア系)とペルシア双方に見出していたことにより、像の中にはギリシア神話の神々の姿も多く、しかもギリシアの神が、ペルシャ様式の衣服や髪飾りを身に着けているのだ。
王自身はゾロアスター教の信者だったといわれているけれど、ヘレニズム化されたゾロアスターといわれるように、そこにはギリシアの文化も多分に盛り込まれていたのかもしれない。

セレウコス朝自体、ヘレニズム3国として独立していく際に マケドニア系とペルシア系の混血によって成り立って行った王朝で「イランの血をもつギリシア国家」ともいわれる。セレウコスの創始者であるセレウコス1世は、元々アレキサンダー大王の東方遠征に強く対抗していた中央アジア地域の貴族 Spitamenes; スピタメネス の娘 Apame; アパメー と結婚し、後のセレウコス朝の後継者を授かっている。そして面白いことに、この子の名前も同じ アンティオコス1世なのだ。

東墳墓の祭壇と、そこからの眺め。

ここにも 巨大な Saga がいた。ネムルト山の守り神なのかもしれない。

東側から西側へと周って行く。
この、砂利を積み上げたような山頂部分の中には、アンティオコス1世自身の玄室があると考えられているけれど、小石を人工的に積み上げたという構造的な性質のせいで崩落の危険性が非常に高い上に、復元が不可能ということで発掘が不可能だという。
21世紀のこのウルトラハイテックな世の中において、2000年以上前につくられた構造物の発掘が不可能というコントラストが、またこの墳墓を魅力的なものにしている。

西側の墳墓にやってきた。こちらはあまりフィーチャーされることはないけど、やはりいくつもの像が点在している。

ライオンと鷲は、おそらく神々と王の守護者。

左からアンティオコス王、コンマゲネ、ヘラクレス。

アポロン、ゼウス。

西側墳墓の南側に並べられた石碑のレリーフは、アンティオコス王の先祖を象ったものとされている。

ってなわけで、再び急な山の斜面を下って、ビジターセンターに戻るのであった。
ネムルト山、マケドニアとペルシャの融和 そして人知れず山の中に眠る王の墓に思いを馳せると、より楽しめるのではないでしょーか。

ビジターセンターに戻って、ソファのひとつを無料でベッドとして使わせてもらうことができた。
その代わり夕飯がめっちゃ高かった・・・が、こんな山のなかじゃ他に食べに行く場所もないし食材の調達にも行けないから、まぁ仕方ない。翌朝、朝日を浴びるとまた違う表情になるという神神の像を見に行くため、早めに寝ることにした。

人類最古の遺跡から巨大バッタ、そしてコンマゲネの王墳墓、、、トルコツーリングは1日1日が濃すぎる😅

つづく

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